CRMを理解し、いかにして取り入れていくのか? は次回にして、重大事故の陰には、それにつながるようなヒヤリとしたことやハットしたことが多く存在するというヒヤリ・ハットについて。
ヒヤリ・ハットとは、重大な災害や事故には至らないものの、事故に直結してもおかしくない一歩手前の事例。文字通り、突発的な事象やミスにヒヤリとしたり、ハッとしたりするもので、重大な事故の前には、その前に多くのヒヤリ・ハットが潜んでいたとされています。
これには、アメリカ人安全技師〝ハインリッヒ〟が発表した『1:29:300』という法則があります。
『1の重大災害の下には、29の軽症事故があり、その下には300の無傷事故がある』という意味で、労働災害の 事例の統計を分析した結果、導き出されたものです。
これをもとに『1件の重大災害(死亡・重傷)が発生する背景に、29件の軽傷事故と300件のヒヤリ・ハットがある』という警告として、安全活動の中で多く採り上げられ、航空の世界においても非常に重要なこととしてとらえられています。
私たちハンググライダー・パラグライダーも日常、ヒヤリ・ハットの状態までいかない(もしくは自覚しない)が、実は非常に危険な状態や行為となると、相当な件数になるはずです。いつもやっていることだから、今までも平気だったので……、という不安全行為・危機意識の無さが、いつヒヤリ・ ハットを飛び越え一気に重大事故になるかも知れません。
『1:29:300』で表されている比率は、よく考えれば非常に高い確率で重大事故を招くことを示唆しています。
いつやって来るか分からない事故を未然に防ぐには、不安全な状態や行為を認識し、ヒヤリ・ハットの段階で地道に対策を考え、実行して(よい習慣とし身につけて)いくことが重要です。
常日頃から、様々なデータの収集、情報の交換を行い、それらを分析して個々のパイロットやスクールにフィードバックしていくということも必要になってきます。
小さなヒヤリやハットしたことでも、大きな事故の可能性を含んでいることを認識し、当事者でなくとも、聞いた話でも情報として積み上げていくことは大事な資料となり、分析の一助となります。今後、機会があれば、気が付いた例や証言を紹介していきます。
~次回に続く~